今年の防災月間(10/9)

APLAの皆さん、こんにちは。

この原稿は、名古屋大学で開催されたあいち防災リーダー塾の開講式に出て防災概論のお話をした後で書いています。リーダー塾には、愛知県内各地から 100人もの方々が集まってくださり、新たな防災リーダーを目指そうとしてくれている様子を見て、大変うれしくなりました。NPO法人としてのリーダー塾 の初めての開催であったこと、県の中野防災局長自らが出席してくださり挨拶をしてくださったこと、従前に比べ若い方々の参加が多かったことなど、APLA のこれからが期待できる雰囲気を感じました。

さて、防災の日を挟むこの1ヶ月間は様々な防災イベントが行われました。そこで、小生が携わったこの1カ月間の防災活動について、備忘録代わりにまとめておきたいと思います。

防災クイズでびっくりした緊急地震速報の周知度

私の今年の防災月間のスタートは8月22日(日)でした。当日は、一日、NHK名古屋のプラザウェーブ21で防災クイズの公開ラジオ番組にお付 き合いしていました。2時間の番組で、前半が地震災害、後半が気象災害でした。何問かの問題を出しましたが、とても残念だったのは、3家族の親子の回答者 のお一人も緊急地震速報のことをご存じなかったということです。緊急地震速報が始まって3年が経ちますが、まだまだ、地震に関わることが十分に市民の方々 に周知できていないことが分かり、防災リーダーの皆さんの啓発の役割がとても大きいことを実感しました。

高校生防災セミナーでの高校生たちの素晴らしいアクションプラン

翌日、8月23日(月)には、愛知県教育委員会と名古屋大学が共催して実施している高校生防災セミナーの発表会がありました。このセミナーは、 平成16年度より愛知県教育委員会が主催して行われてきましたが、本年より、高大連携の形で県と大学が共催する形で実施することになりました。セミナーは 夏期休暇中の4日間の座学・実学学修と、2学期の実践活動、年末の活動成果発表会から構成されています。APLAの皆さんにも全面協力していただいていま す。本年は、県内の高校15校(県立12校、国立1校、名古屋市立1校、私立1校)から、生徒・教員計75名が参加しました。8月23日は、各学校での防 災活動のアクションプラン作成のワークショップとその発表会が行われました。各校の防災アクションプランは内容・発表の仕方のいずれも素晴らしく、これか らが大いに期待できそうです。高校生たちは、12月24日には再び名古屋大学に集まり、シンポジオンで2学期に実施する活動成果を発表する予定です。さら に、2年目には、高校生自らが地域に出て行き、地域での防災活動を主導する防災リーダーとして活躍する予定です。ぜひ、APLAの皆さまと良い協働ができ ると良いと思っています。

三河地区での防災講演会

8月最終週の土日(8月28日&29日)は、中日新聞が企画した防災講演会に参加していました。豊橋、岡崎、豊田で講演をしましたが、3地区で の防災意識の違いを多少感じて帰ってきました。いずれの会場も、若い方々の参加が少なかったのが少し残念でした。徐々に、地震対策への関心も薄れてきてい るのかもしれません。

つボイノリオさんとの「開府400年と地震」のトーク

ここ数年、防災の日、9月1日は、毎年、つボイノリオの「聞けば聞くほど!」に出演させて頂いています。今年も、つボイさんや小高さんと「歴史 から学ぶ地震対策」についてお話をすることができました。今年は名古屋開府400年ですから、安土桃山時代の地震についてお話をしました。450年前の桶 狭間の戦いの後、本能寺の変、大阪城の築城、天正地震、家康の江戸への転封、朝鮮出兵、慶長の四国・別府・伏見での地震、地震加藤(清正)、方広寺の大仏 と伏見城の倒壊、関ヶ原の戦い、南海トラフでの慶長地震、名古屋への清須越などを振り返り、400年前の大阪、江戸、名古屋のまち作りの特徴についてお話 をしました。
9月1日は国の総合防災訓練の日でした。当日は、初めて、東海・東南海・南海地震が連動して発生した訓練が行われました。また、民間人が初めて総合防災訓 練に参加し、そのお一人として、ボランティアとの連携を担うためにレスキューストックヤードの栗田暢之さんが選ばれ、自衛隊のヘリコプターにの乗りこまれ ました。ぜひ、栗田さんから、体験談を聞きたいと思っています。

大阪教育大学付属池田小学校での防災教育談義

9月2日は、大阪府池田市にある大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンターに出かけて、防災教育についてのお話をしてきました。このセン ターは、2001年6月8日に附属池田小学校において23名の児童及び教員が殺傷された事件を契機に、学校危機支援やメンタルケアに関する研究を実施する ために池田小学校の敷地内に設置された研究機関です。発足当初は、事件対応もあり防犯を中心とした研究教育が行われていましたが、最近は、南海地震への危 機感もあり、防災教育も重視しようとの機運が高まっているようです。今回は、私どもが実施している防災教育の取り組みについてお話をさせてもらいました。 ちなみに、同センターには、名古屋大学で心理学の学位を取得した豊沢純子先生が赴任されており、名古屋との縁もあるセンターです。

テレビ塔でのライトダウン

9月3日の夜には、テレビ塔で行われた防災フェスタの前夜祭に参加しました。テレビ塔のライトダウンと10個のスポットライト点灯、胡弓の調べ の中で、10年前に東海豪雨で犠牲になった10人の方々への追悼を行いました。当日は、APLAの皆さまも、様々な形でご協力いただき、ありがとうござい ました。会には、衆議院災害対策特別委員会委員長の五十嵐文彦議員を始め、衆議院、県会、市会の議員、愛知県の中野防災局長や名古屋市の長崎危機管理官を 始めとする自治体の皆さん、数多くのボランティアや防災リーダーの皆さんが集まってくださいました。胡弓の調べの中で、10年前を思い出す素晴らしい機会 となりました。ライトダウン&胡弓の調べの様子は、全テレビ局・全新聞社が取材してくれたようです。以下に、このイベントの背景を少しだけご説明しておき ます。

従来、内閣府防災担当が主導し、政令市が持ち回りで実施していた国の防災フェアが、財政難のあおりで、本年から東京タワーだけの開催となり、地 域での開催ができなくなりました。私を含む何人かが、これでは、地域での防災の火が消えてしまうのではと危機感を感じ、レスキューストックヤードの栗田さ ん、名古屋テレビ塔の大沢社長、内閣府の方々と相談して、東京タワーでのライトアップに呼応して、名古屋テレビ塔でライトダウンや防災フェスタを開催する ことを企画しました。
レスキューストックヤードが久屋に引っ越したこと、地デジ化により名古屋テレビ塔が来年7月でテレビ塔としての役割を終えテレビ塔の今後の存続に向けて 様々な検討をしていたこと、内閣府防災の皆さんも地域と東京との連携を模索しており東京での防災フェア開催に小生もお手伝いしていたこと、などの環境があ り、内閣府・テレビ塔・RSYとの連携がとてもうまくいきました。
名古屋テレビ塔が東京タワーでのライトアップに連携することが決まったことがきっかけとなり、タワー協議会が中心になっての呼びかけに対し、全国10か所 のタワーが呼応し、9月3日の夜に一斉にライトアップ・ダウンが行われました。当地では、一宮の138タワーもライトアップをしてくれました。こういった 地域間連携ができたことは、今後への様々な可能性を拓くことになったと思います。

それと、名古屋テレビ塔だけがライトダウンをすることになった本当の理由は、水銀灯でライトアップしているため、瞬間的にライトアップできな かったからです。そこで、栗田さんの発案で、10年前の犠牲者を追悼するためライトダウン&10灯のサーチライトの点灯ということに致しました。

テレビ塔での人力加振の振動実験

9月4日は、早起きをして、朝7時からテレビ塔で振動実験を実施しました。名古屋テレビ塔は、我が国最初の電波塔として1954年に建設され、 登録文化財にもなっています。テレビ塔の設計者は内藤多仲で、その後、通天閣や東京タワーの設計も手がけました。地デジ化で、テレビ塔としての機能を終え たあとも、末永くテレビ塔を残してもらいたいと関係者で考え、テレビ塔の下に免震装置を入れる耐震補強が検討されています。今回の振動実験は、免震補強設 計に先だってテレビ塔の揺れ方を調べるためのものです。まず、テレビ塔の揺れやすい周期を調べ、その周期で、大人数が体を左右に動かすことによりテレビ塔 を揺するという人力加振実験を実施しました。当日は、名古屋大学の教員・学生に加え、名古屋工業大学や椙山女子学園の教員・学生も参加し、25人程度の人 数でテレビ塔を揺すりました。テレビ塔は思いのほか良く揺れ、参加者一同、びっくりしました。この実験の様子は、当日のNHKのニュースで全国に流れたよ うで、建築学会などでも護雅史先生のスウィングの様子が話題になりました。

テレビ塔での防災フェスタ

9月4日は、人力加振実験でヘトヘトになった後、10時からは防災フェスタ2010in久屋大通に参加しました。名古屋大学の私どものブースで は、学生たちが様々な耐震実験教材を使って耐震化啓発に取り組んでくれました。また、お昼の時間には、RSYの栗田さん、名古屋テレビ塔の若山さん、にし ボラの安井さんと一緒に、「名古屋の防災とテレビ塔のこれから」についてのミニトークを行いました。テレビ塔の保存や防災活用について、市民の皆さんと 様々な議論ができました。
さらにこのミニトークのあと、東京タワーでの防災フェアと連携して、「災害に立ち向かう市民の連携~東京会場とのSkype中継~」と題したミニトークを 行いました。テレビ塔周辺には無線LANの設備が整っており、これを利用して、東京タワーの講演会場とスカイプ中継をしました。スカイプ中継は初めての試 みで、飛田潤先生や護雅史先生の奮闘努力で実現ができました。東京会場では、東京いのちのポータルサイトが主催した「住宅密集地における耐震化対策」と題 した防災トークが行われており、国土交通省の渋谷さん、東急電鉄の寿乃田さんなどに加え、名古屋から参加していた愛知県の川端さんもテレビを通して参加し てくれました。スカイプを利用した防災トークが可能になると、今後、地域での連携イベントもずっとやりやすくなるのではないかと思います。

東京タワーでの防災フェア

名古屋テレビ塔での防災フェスタの翌日、9月5日は、東京タワーで開催していた防災フェアに参加しました。私は、時事通信の中川さんと一緒に防 災トークショーに出演しました。当日は、内閣府が主導する「一日前プロジェクト」や「耐震化対策」、「災害被害軽減のための国民運動」などについて、中川 さんと漫談をしてきました。

建築学会大会での兵庫県南部地震15周年の討論会

9月8日~10日は、富山で開催された日本建築学会大会に参加していました。今年は、阪神淡路大震災から15年ですから、この15年で何が分かり、何が課題として残っているのかについて、討論会を開催してきました。

CBCの特番「迫りくる!天変地異・東海豪雨から10年」

9月11日は、CBCの特番に、群馬大学の片田先生と一緒に出演しました。今年で10作目になりますが、毎年こういった番組を作っているCBC の皆さんに敬意を表したいと思います。昨年は、伊勢湾台風50周年、本年は東海豪雨10周年にあたりますので、この2年間は風水害が中心の番組作りとなっ ていますが、来年は、濃尾地震120周年ですから、地震のウェイトが増えると良いと期待しています。

東海・東南海・南海地震の連動性評価に関する研究の中間報告会・中電ホール

9月16日は、午前中に構造設計井級建築士の講習をした後、中電ホールで開催された表記報告会に参加しました。当日は、神田知事のあいさつが予 定されていましたが、突然の引退会見で急きょあいさつはキャンセルになったようです。この研究プロジェクトは文部科学省が主導する大規模研究プロジェクト で、小生も末端で参加をしています。当日は、サイエンス中心の話題が多かったですが、第3部のパネルディスカッションでは、私が進行役となり、プロジェク ト研究従事者に加え、内閣府の越智参事官、愛知県の中野防災局長、中電の服部部長、時事通信の中川編集長にも参加してもらい、今後の地震防災課題の議論も 行いました。内閣府・越智参事官より、3地震連動を前提にした大綱化を目指して本格的な検討に入ることなどが公表され、今後の防災対策に大きなドライブが かかることが実感させられました。

その後夕刻からは、NSLを開催し、軽食とアルコールを嗜みながらお昼には聞きにくかった本音トークセッションが執り行われ、色々な課題が多いことが明らかになりました。

防災フェスタの打上げ

9月17日の夕刻には、防災フェスタの打ち上げが、浩養園で盛大に行われました。当日は、10月から渡米するRSY・浦野さんの送別会も行われました。会では来年もフェスタを続けることを皆で誓いました。

あいち防災リーダー塾

9月18日には、あいち防災リーダー塾に参加してきました。例年にも増して若い方々が参加されていたことに心強さを感じました。新たなAPLAのメンバーの増強になることを期待しています。

地域で様々な取り組みが行われていることを実感した1ヶ月でした。日ごろ地域で活動されている皆さまの奮闘に感謝します。それではまた次回。