四川地震と岩手宮城内陸地震に学ぶ(08/8)

皆様、こんにちは。このところ、ミャンマーでの水害、四川での大地震、岩手・宮城内陸地震、岩手県北部沿岸地震と、国内外で大災害が続いていま す。四川の大地震は私たちがこれから経験する、東海・東南海・南海地震と同規模の地震災害で、いろいろ学ぶ点も多くあります。私も7月末に3泊4日で、現 地の様子を見てきました。四川の省都成都では被害は殆ど有りませんでしたが、世界遺産のまち都江堰の被害は甚大でした。さらに映秀では、ほとんど壊滅と言 う状況です。ちょうど、兵庫県南部地震のときの大阪、神戸、淡路と対比できます。成都や大阪の機能が生きていたことは、幸いだったと思います。一方、私た ちが経験するはずの東海・東南海・南海地震では、残念ながら大都市が同時被災する可能性があります。

さて、四川地震の概要は下記の通りです。マグニチュードは8.0、被災面積44万km2、被災者4624万人、死者・行方不明者約8.7万人、 負傷者36万人、被災者4,624万人、倒壊家屋779万戸、損壊家屋2,459万戸、被害金額は15兆円程度とされているようです。被災面積がわが国の 国土より広いのには驚きます。

この地震では、地震規模の大きさに加え、建物の耐震性の低さが被災地域を広げ、被害を甚大にしました。また、震源に近い山間地では、土砂崩壊による道路閉塞や河川閉塞により、孤立化による救命・援助の遅れや、堰き止め湖の決壊などの問題を招きました。

多くの人たちの印象に残ったのは、7000にも及ぶ小中学校校舎の倒壊だったと思います。平日昼間の地震だったため、多数の子供たちが犠牲にな りました。これを見て、わが国政府は、学校建築の耐震補強補助率をあげました。実は、兵庫県南部地震以降のわが国の被害地震12地震のうち、平日昼間に起 きた地震は過疎地を襲った2000年鳥取県西部地震しかありませんでした。これまで、生徒が犠牲になった映像を見たことがなく、小中学校の耐震化の重要性 を余り認識していなかったのが、四川の映像を見て、世論が大きく動いたようです。

また、膨大な数の家屋倒壊の結果、大量の避難者が発生し、330万張のテントが必要とされました。しかし、世界最大のテント生産国中国をもって しても、毎日3万張のテントの供給が限界だったようです。愛知県や名古屋市のテントも寄贈されましたが、数の上では微々たるものでした。このことから世界 が有する災害対応力の限界を知ることができます。

ただ、さすが大国中国です。大変なスピードで応急仮設住宅が建設されていて、すでに100万軒ほどが作られているようです。日本の仮設住宅のよ うな丁寧な作り方ではなく、発泡スチロールにトタン板を付けただけの壁と屋根、床は土間コンクリートがむき出し、便所・台所・風呂は共同で、ベッドが3つ 入る箱を作っているだけです。それでも、野宿やテント暮らしよりずっと良い環境になります。中国通の人はご存じだと思いますが、便所は仕切りがなく単に溝 が作るだけ、風呂も仕切りのないシャワーがあるだけです。そして土地も国有地なので、大変なスピードで大量の応急仮設住宅を作ることができたようです。中 国市民の逞しさを感じました。5万棟の仮設住宅を作るのに数ヶ月もかかった神戸とは、随分様相が違っています。このような点は、大量の被害が予測される当 地でも参考になることだと思います。

一方、岩手宮城内陸地震のマグニチュードは7.2、死者・行方不明者22名、建物の全壊6棟、半壊8棟、一部損壊687棟、火災4件でした。こ の地震は、6400人余の死者と10万棟にも及ぶ全壊建物を出した兵庫県南部地震と、地震規模はほぼ同じ大きさです。ですが、山間地に震源があったため、 土砂崩壊が多数発生したものの、人的・物的被害は微少にとどまりました。

この2つの地震災害から学ぶことは沢山あります。第一に、四川大地震のような大量の被害を出すと全世界で支援をしても対応には限界があることで す。そして、大量の犠牲者発生の原因は、山体崩壊と耐震性の不足する建物の存在にあって、住む場所と建物の良否が生死を分けることも学びました。また、建 物が燃えない材料でできていたり、密集していなければ、延焼火災が発生しないことを教えてくれています。

一方で、960万?の国土に13億人が住む中国にとっては、大量の被害とは言っても、被災面積・被災者は共に国全体の5%以下で、被害金額も GDPの4%程度でしかありません。このため、為替や株価の変動は微少にとどまったんだろうと思います。国力と被災度との比は、国全体への影響のバロメー タとなります。被災面積・被災者・犠牲者の国全体の面積・人口に対する比をみると、四川大地震の被害は、兵庫県南部地震とほぼ同程度であることが分かりま す。

また、兵庫県南部地震と岩手・宮城内陸地震の被害の違いは、災害は人間社会が生み出すものであって、大都市の地震危険度の高さを教えてくれてもいます。

こういった中、今世紀前半に発生が懸念される東海・東南海・南海地震では、被災地は西日本の広域に及び、被災者は数千万人、犠牲者は3万人弱、 全壊建物は100万棟弱、経済被害は80兆円程度となるとされています。人的・物的被害は四川大地震と同程度ですが、経済被害はオーダーが異なります。国 民の1/3が被災し、GDPの2割弱、国家予算規模の被害を被れば、まさしく国難です。これを回避するには耐震化を進めるしかありません。国民一人一人が 地震への備えの大事さをわがことと実感して、防災行動を始めることが必要になります。

その先導をきってくださっているのが、防災リーダーの皆さんです。どうぞ、これからも、よろしくお願いいたします。