過去と今の室内を比較する(08/3)

皆さん、こんにちは。お元気でお過ごしでしょうか? 防災の世界では1月から2月の2ヶ月間に一番講演会が多く行われるようです。1月17日の 阪神淡路大震災に加え、年度内の予算消化の都合もあるのでしょう。この時期は、大学も、卒業や入試などで一番忙しい時期で、毎年てんてこ舞いしています。 この2ヶ月の間にお話をした場所を調べてみましたら、愛知15、岐阜1、三重1、静岡2、長野1、新潟1、大阪3、兵庫1、東京3、神奈川4、埼玉1、千 葉1という結果でした。思いの外、関西や関東で沢山お話をしました。これは、今までには無かったことです。とくに、大阪と横浜では防災意識が一気に高まっ ているようです。私たち、愛知もうかうかしていられません。東や西に負けず、より安全な地域を目指して楽しみ・頑張りましょう。

ちなみに、3月29日には、市民やボランティアの方々が中心になって「防災フェスタ2008inみなと」が開催しました(この原稿を書いている ときはこれからですが・・)。この会は行政からのお仕着せではなく、地域の皆が自発的に実施したもので、まさしく、皆さんのわき上がるような思いの結晶で す。災害ボランティアコーディネータや防災リーダーの方々の創意工夫と熱意を強く感じることができました。来年もどこかでやりましょう。はやく手を挙げた もの勝ちだと思います。また、1月には、半田で、「木造耐震ネットワーク知多」という、地域ぐるみでの耐震化の推進組織を発足しました。昨年秋に安城暮ら しと耐震協議会ができたのに続いて知多でも心強い活動が始まりました。このような活動は、他地域からも「恐るべし名古屋」と注目されているようです。

さて、平成20年度になって、この4月から新たに2つのおもしろいことが始まりましたので、簡単にご紹介しておきます。一つは、愛知県防災局が 始めた防災学習システムです。平成16年から18年にかけて、愛知県・名古屋市と私たちが共同開発した防災力向上シミュレータが、いよいよWeb公開され ます。地図で自宅の位置をクリックすると、自宅の揺れを予測し、さらに自宅の情報を入れると、家の倒壊危険度を教えてくれます。耐震化の啓発を行うには もってこいのウェブ教材です。 もう一つは、新城市にオープンした防災学習ホールです。愛知県が始める防災学習システムに加え、様々な教材を活用して、触れて学べるユニークな学習の場で す。私たちが開発した様々な「ぶるる」も勢揃いしています。振幅1mもの揺れを再現する装置も登場し、起震車では再現ができない未体験ゾーンの揺れを体感 できます。さらに、緊急地震速報の体験コーナーもあります。また、新城のまちを様々な角度から解剖し、まちを知ることで防災の大事さを学びます。まさし く、旭山動物園のような防災学習の場です。東三河の自然に触れながら立ち寄ってみてはどうでしょうか?

そろそろ、本題に入りましょう。本日の話題は、室内の問題です。これまでに、地盤の問題、建物の問題、ライフラインの問題について考えてきまし た。昔と比べ、都市に人口が集中したために、町が軟弱な地盤に拡大し、住宅が密集し、高層化してきました。このため、私たちが生活する部屋の揺れは、かつ ての地震のときより遙かに強く揺れます。揺れやすい地盤、揺れやすい建物、そこに生活の場があります。また、建物が近接したために、ひとたび火事が発生す ると、容易に燃え移ります。また、高層化によって、マンション住まいの場合にはエレベータで上下移動をするため、閉じこめの危険もあります。さて家の中は どうでしょう。昔との違いが色々分かります。

今は、家の中に家具や電化製品が溢れています。昔は押し入れのある日本間に、小さな茶箪笥とちゃぶ台しかなかったように思います。一つの部屋を 時間に応じて使い分ける多機能な部屋でした。それが、今や、部屋が機能別に分かれ、寝室には大きなタンスに囲まれたベッドが、居間には、リビングボードや ピアノ、大画面テレビなどの電化製品が溢れています。豪華な吊り照明が垂れ下がっている家も多いでしょう。台所にも、食器戸棚にはグラスやお皿が満載、そ の出口には大型冷蔵庫がどかんと座っています。さて、こんな部屋が強い揺れを受けたらどうなるでしょうか? もし、家具をしっかりと固定していなかったら 大変なことになります。

できれば、置き家具を置かないのがベストですね。ウォークインクローゼットのような家具部屋を作ることができれば安心です。それができなけれ ば、少なくとも、寝ているときに無防備になる寝室には家具を置かない、それも駄目なら家具を固定する。それすらできなければ、せめて寝る位置を工夫する、 これも駄目なら枕の位置を変える、色々やれそうです。家具の固定の仕方にも色々あります。できるだけしっかりと壁に固定したいですね。その場合は、頑丈な L字金具としっかりしたボルトを使いましょう。壁が石膏ボードの場合には、下地を探してその位置に固定しましょう。大工センターに行くと下地探しの道具が 売っています。賃貸住宅などで、やむなく突っ張り棒を使うときは、天井がしっかりしているところを探し、奥の方にセットして下さい。

家具固定の方法については、色々なホームページは出版物で紹介されています。私たちも、様々な家具や固定方法について振動台実験をし、その動画 をホームページ公開していますでので、ご覧下さい(http://www.sharaku.nuac.nagoya-u.ac.jp/laboFT /fall_furniture/index.html)。また、名古屋大学の地域防災ホールに来ていただくと、そのときの室内の揺れを体感できる新兵器 BiCURI(ビックリ:Bidirectional Shaker and Computed Ultra Response Integrator)と出会うことができますので、是非お立ち寄り下さい。

ついでに、もう一つ。先日、新潟の巨大ホームセンターで内閣府主催のぼうさいカフェをやってきました。ホームセンターのフードコートで簡単なお 話をした後、地域の皆さんとホームセンター内の防災ツアーをしました。ホームセンターは、防災グッズの宝庫でした。家の作り方、柱や梁・筋交い、石膏ボー ドや構造用合板、屋根の材料など、家そのものが分解されておいてあります。また、家の中の家具や電化製品、大工道具日用品、薬品、防災コーナー(家具固定 道具、ガラス飛散防止フィルム、ホイッスル、非常用持ち出し品、バール、ジャッキ、サランラップ、発電機、水、食料)など、それはそれは見事な防災学習セ ンターです。是非、皆さん、家の中の対策を啓発する場として、ホームセンターを活用してみてはどうでしょうか? 。