防災に関わる法律と機関(05/3)

2005年3月

今回は、防災に係わる法律や防災を支えている機関について紹介する。各法律や機関の詳細は、ホームページなどで調べて頂けると幸いである。

我が国の防災対策は法律に規定された様々な機関により実施されている。防災の基本的な事項は、1961年に公布された「災害対策基本法」に定め られている。災害対策基本法は、1958年9月に発生した伊勢湾台風での甚大な被害を契機として策定された法律であり、「防災に関し、国、地方公共団体及 びその他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、責任の所在を明確にするとともに、防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧及び防災に関する財 政金融措置その他必要な災害対策の基本を定めることにより、総合的かつ計画的な防災行政の整備及び推進を図る」とされている。

災害対策基本法では、防災計画、災害予防、災害応急対策、災害復旧と言った防災の基本的事項が定められ、合わせて、中央防災会議や地方防災会議 の設置が謳われている。この中で、災害は「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他そ の及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害」と、防災は「災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を 防ぎ、及び災害の復旧を図ることをいう。」と定義されている。また、国の行政機関を指定行政機関と位置付け、日本電信電話株式会社、日本銀行、日本赤十字 社、日本放送協会その他の公共的機関及び電気、ガス、輸送、通信その他の公益的事業を営む法人を指定公共機関として位置付けている。さらに、防災計画とし て、中央防災会議が策定する最上位の防災基本計画、指定行政機関が策定する防災業務計画、都道府県や市町村などの地方防災会議が策定する地域防災計画を規 定している。中央防災会議は内閣府に設置され、会長は内閣総理大臣が務めている。中央防災会議には、必要に応じて専門調査会が設置され、個別の重要事項の 審議をおこなっている。事務局は内閣府の防災担当が担っている。

駿河湾を震源とする東海地震に関しては「大規模地震対策特別措置法(大震法と略されることが多い)」により、直前予知を前提にした特別な防災対 策が行われている。この法律は、1978年に公布され、「地震防災対策強化地域の指定、地震観測体制の整備その他地震防災体制の整備に関する事項及び地震 防災応急対策その他地震防災に関する事項について特別の措置を定めることにより、地震防災対策の強化を図る」とされている。予知ができたときに特別な対応 を行う地域として地震防災対策強化地域を規定し、強化地域に係る地震に関する観測及び測量の実施の強化を謳っている。中央防災会議は地震防災基本計画を、 指定行政機関や強化地域内の地域防災会議は地震防災強化計画を、会社や学校などの事業者は地震防災応急計画を作ることを義務づけており、内閣総理大臣が地 震に関する警戒宣言を発したときの対応行動を定めている。

東南海地震と南海地震に関しては2003年に「東南海地震・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特措法」が作られ、地震防災対策の推進の ために、東南海・南海地震防災対策推進地域を指定している。内容的には、大規模地震対策特別措置法と類示しており、中央防災会議は、東南海・南海地震防災 対策推進基本計画を、指定行政機関や地震防災対策推進地域の自治体は推進計画を、事業者は対策計画を策定することになっている。予知が可能な観測態勢が整 備された場合には、大震法の強化地域に移行することになっている。

また、兵庫県南部地震での甚大な被害を受けて、1995年に「地震防災対策特別措置法」が作られた。この法律は、「地震に関する調査研究の推進 のための体制の整備等について定めることにより、地震防災対策の強化を図り、もって社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。」とし ており、地震調査研究推進本部の設置を定めている。地震調査研究推進本部は、地震防災対策の強化、特に地震による被害の軽減に資する地震調査研究の推進を 行う組織であり、本部には地震調査委員会が設置され、活断層の長期評価、強震動の予測、地下構造調査、観測計画などを実施している。本部の事務局は、文部 科学省の地震防災研究課が担っている。

さらに、1947年に作られた災害救助法は、「災害に際して、国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、応急的に、必 要な救助を行い、災害にかかつた者の保護と社会の秩序の保全を図る」としており、収容施設(応急仮設住宅を含む。)の供与、炊出しその他による食品の給与 及び飲料水の供給、被服、寝具その他生活必需品の給与又は貸与、医療及び助産、災害にかかつた者の救出、災害にかかつた住宅の応急修理、生業に必要な資 金、器具又は資料の給与又は貸与、学用品の給与、埋葬など災害発生後の救援・救護を定めている。また、1962年に作られた激甚災害法は、「災害対策基本 法に規定する著しく激甚である災害が発生した場合における国の地方公共団体に対する特別の財政援助又は被災者に対する特別の財政援助又は被災者に対する特 別の財政措置について規定する」としている。
これらの法律の他にも、主として建築物の耐震性に係わる法律として、建築物の耐震基準を規定している「建築基準法」、兵庫県南部地震における既存不適格建 物の甚大な被害を教訓に作られた「建築物の耐震改修の促進に関する法律」、住宅の品質を向上させるために耐震等級などを規定した「住宅の品質確保の促進等 に関する法律」などもある。

我が国の地震防災を支えている組織には、内閣府防災担当及び中央防災会議、内閣官房の危機管理部門、消防庁、国土交通省、気象庁、文部科学省地 震防災研究課と地震調査研究推進本部などの中央省庁に加え、都道府県や市町村などの地方公共団体の防災部局がある。また、電気・ガス・通信・鉄道などのラ イフライン企業や、放送会社、日本赤十字なども重要な防災機関である。研究機関としては、国土総合技術政策研究所、(独)土木研究所、(独)建築研究所、 (独)港湾空港技術研究所、国土地理院、気象庁気象研究所、(独)産業技術総合研究所地質調査総合センター、(独)海洋研究開発機構、阪神・淡路大震災記 念人と防災未来センターなどが、関連学会には、土木学会、日本建築学会、自然災害学会、日本地震学会、日本地震工学会、地盤工学会、地域安全学会、災害情 報学会、などがある。