最近の国・県・市の地震防災施策の動向(04/5)

2004年5月

APLA通信の連載を始めるに当たって

APLA通信の発刊おめでとうございます。あいち防災カレッジを通して、巡り会えた防災リーダーの皆さんは、当地の防災に多少なりともお付き合いしてい る小生にとって、同志のような関係になります。リーダーの会も発足して1年が経過し、いよいよ本格的に活動を開始されると思います。小生も、会の相談役と して参加させて頂くことになりました。そこで、義務として、1ページ程度の小文をAPLA通信に連載するようにとの指示を頂きました。毎号、私の分かる範 囲で、周辺動向をご報告すると共に、何かのトピックスについて簡単な説明記事を書いて行きたいと思います。連載を始めるに当たって、メニューを考えてみま した。これから順に解説しようと思っているトピックスは下記のようなものです。

(1) 最近の国・県・市の防災施策の動向
(2) 東海・東南海地震の驚くべき被害量
(3) 単純な加減乗除で分かる地震の怖さ
(4) 過去の教訓を学んでいるか
(5) 愛知から始まった日本の防災
(6) 防災に関わる法律と国の機関
(7) 平成16年度の国・県・市の防災施策
(8) 地震動予測地図って何?
(9) ナウキャスト地震情報って何?
(10) 地震予知はどういう仕組み?
(11) 揺れない建物:免震と制震
(12) 地震の勉強ができる博物館
(13) 平成17年度の国・県・市の防災対策
(14) 中央防災会議と地震調査研究推進本部
(15) 日本はどうやってできた?
(16) 繰り返す巨大地震
(17) 巨大地震の前後には内陸で直下地震
(18) 地震が作った豊かな自然と都会生活
(19) 平成18年度の国・県・市の防災対策
(20) 広小路を走ると分かる名古屋の地盤
(21) 木造建物:在来工法とツーバイフォー
(22) 鉄筋コンクリートの不思議
(23) 鉄骨造の建物
(24) ブロック塀と家具の転倒防止
(25) 平成18年度の国・県・市の防災対策
(26) ボランティアは神戸から始まった
(27) 都会生活、そのとき何が起こる
(28) 現代都市では過去の教訓が生きない
(29) 足元からはじめる防災対策
(30) 私の防災対策

雰囲気はおわかり頂けましたでしょうか? 国・県・市町村の防災施策動向、防災に関わる雑学、ちょっと科学的なお話など、ごっちゃ混ぜにして紹 介していきます。今後、皆様からのご意見に応じて、順番を変えたり、別のトピックスを加えたり、柔軟に考えていきたいと思います。1年に6回発行されるよ うですから、毎年度の最初には1年間の防災施策を振り返ってみます。今回は第1回ですから、今までの防災施策の動向を概説することにします。

周辺のできごとなど

新年度になり、私の周りも新人が一杯です。愛知県の防災部局の職員の方々も沢山異動されました。啓発育成Gにいた川村さんも古巣の教育委員会に異動され ました。先日、移動後のお部屋を覗いてみましたが、周辺は偉い校長先生ばかり、シーンとした厳粛な雰囲気で、思わず息を飲んでしまいました。川村さんも居 心地悪そうでした。肩こりが酷いだろうと思います。
さて、4月末に、小田原市にある地球博物館に行ってきました。地球の誕生から日本列島の成り立ち、地震の発生まで、実際のモノに触れながら勉強できる素晴 らしい博物館でした。神奈川県立の博物館で、プロの学芸員がどんな質問にも答えてくれます。小田原駅からタクシーで千円以下です。箱根の麓です。東海3県 にこのような公立博物館が無いのは残念です。聞くところでは、名古屋市科学館の建て替え計画があるとのこと。地震や防災を実感できる展示ができると良いと 思います。4月に市科学館で講演させて頂いたときに樋口館長にもお願いしました。

最近の防災施策の動向

21世紀以降の国・愛知県・名古屋市における防災施策の動向を振り返ってみます。2001年初頭に、行政改革の一環として行われた中央省庁再編と共に、 我が国の防災の総本山である中央防災会議が国土庁から内閣府に移管されました。そして、その第1回中央防災会議(2001年1月26日)において、小泉首 相から、「東海地震については、大規模地震対策特別措置法の成立以来四半世紀が経過しており、その間の観測体制の高密度化・高精度化や観測データの蓄積、 新たな学術的知見等を踏まえて地震対策の充実強化について検討すること」と言った指示が出されました。これに基づいて、2001年3月に東海地震に関する 専門調査会が設置、さらにその後、東南海・南海地震等に関する専門調査会、東海地震対策専門調査会が矢継ぎ早に設置されました。これらの調査結果を受け て、2002年4月には東海地震に対する地震防災対策強化地域の拡大が、2003年12月には東南海・南海地震に対する地震防災対策推進地域の指定が行わ れました。
愛知県が積極的に対応を始めたのは、東海地震の震度予測分布が公表された2001年11月以降です。12月に知事を会長とする「愛知県地震対策会議」を庁 内に設置し、翌2002年1月には、「愛知県地震対策有識者懇談会」と、「愛知県東海地震・東南海地震等被害予測調査検討委員会」を設置しました。有識者 懇談会では今後の県の地震対策方針としての「あいち地震対策アクションプラン」の内容を検討することを、被害予測調査委員会では2003年度末までに被害 予測調査を実施し想定すべき被害数量を把握することを目的としました。その後、2月には地震防災に係わる県民の意識調査を実施して県民の備えの現状把握を 行い、3月には意識啓発のために地震防災リーフレットを作成し、260万部を全戸配布しました。
さらに、4月には防災担当部署である消防防災課を組織拡充し、防災局を設置しました。4月24日に、強化地域が県下58市町村に拡大されたのを受け、10 月23日に県の地震防災対策強化計画を全面改訂し、地域防災計画を抜本的に見直した。同じ時期に、強化地域指定された県下の市町村は強化計画を、特定事業 者は応急計画を策定した。

11月には有識者懇談会での議論を受けて、県が取り組むべき地震防災施策を体系化した行動計画「あいち地震対策アクションプラン」を策定し公表していま す。その後、アクションプランに基づいて、様々な施策が展開されています。2003年5月には、県の防災会議にて、地震被害予測調査の中間報告が行われて います。秋以降には、帰宅困難者等支援対策連絡会議と基幹的広域防災拠点整備調査検討委員会を設置し、帰宅困難者問題と広域防災拠点に関する検討を始めま した。さらに、2004年3月には、地震対策推進条例が制定されました。

一方、名古屋市では、2002年12月に名古屋駅前地区滞留者等対策検討小委員会を設置して、帰宅困難者問題の対応策を検討すると共に、2003年度には 市民の意識啓発のため50mメッシュの地震ハザードマップ作成に着手しました。今夏には各戸配布の予定です。岡崎市でも内閣府の支援で同様の高密度のハ ザードマップ作成を始めたようです。他の市町村でも被害予測調査が始まりつつあり、豊橋市、日進市、田原市などが被害予測調査を実施しました。このように 各地で様々な施策が展開されています。これらを実効あるものにするには我々の協力が不可欠です。