我が国政府の防災施策:中央防災会議と地震調査研究推進本部

 我が国の防災施策について簡単に勉強しておこう。我が国の防災施策の責任機関は、中央防災会議 である。地震防災研究に関しては、文部科学省が所管する地震調査研究推進本部がリード役を務めている。これに加えて、気象庁、消防庁、国土交通省などの中 央省庁、地方自治体が様々な防災施策を展開している。以下には、中央防災会議を中心とする防災施策の現状を概観する。

 中央防災会議は、災害対策基本法で位置づけられた機関であり、災害対策基本法は1959年伊勢湾台風を契機に作られた。中央防災会議での検討状況は、http://www.bousai.go.jp/に、活動の概要は「広報ぼうさい」(http://www.bousai.go.jp/kouhou/)によくまとめられている。

 中央省庁が再編された2001年に、中央防災会議は国土庁から内閣府に移管され、これをきっかけに、東海地震に関する検討が活発化した。東海地震は、 1978年に制定された大規模地震対策特別措置法に基づいて想定された地震であり、唯一、地震予知の可能性がある地震とされている。中央防災会議は、 2001年3月に「東海地震に関する専門調査会」を設置して、想定震源域の見直しと震度予測を行い、その後、2002年3月に「東海地震対策専門調査会」 を設置して、2002年4月に地震防災対策強化地域を拡大した。2003年5月には、被害予測結果に基づき東海地震対策大綱を示し、総合的な対応策をまと め、さらに、同年7月に地震防災基本計画を修正決定し、12月には活動要領も定めた。一方、東南海地震・南海地震に関しても、2001年10月に「東南 海・南海地震等に関する専門調査会」を設置した。その後、「東南海地震・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が2002年7月26日に 公布され、2003年12月には、地震防災対策推進地域が指定された。推進地域には1都2府18県の652市町村が含まれている。

 中央防災会議では、南海トラフでの3地震に対する具体的対策に加え、総合的な地震防災対策にも着 手しつつある。2001年9月に「今後の地震対策のあり方に関する専門調査会」を設立し、今後の地震対策の基本的な方向について提言をしている。この提言 を受けて、2002年9月に「防災に関する人材の育成・活用専門調査会」、同年10月に「防災情報の共有化に関する専門調査会」、同年12月に「企業と防 災に関する検討会議」を相次いで設立し、精力的に検討を行っている。

 その後、これらの検討を受けて、2003年後半には、「災害から文化遺産と地域をまもる検討委員 会」、「災害教訓の継承に関する専門調査会」、「民間の力を活かした防災力向上に関する専門調査会」、「防災教育普及策検討委員会」(外郭団体に委託)な どが設置され、より具体的な検討が始まりつつある。さらに、ナウキャスト地震情報(その後、緊急地震情報を名称変更)の活用方法についても具体的な検討が 始まり、2004年に試験運用が始まっている。広域防災体制の整備に関しては、首都圏、京阪神都市圏、名古屋圏で広域連携の方策と広域防災拠点の整備につ いて検討が行われている。首都圏では、2003年度より有明の丘地区と東扇島地区で基幹的広域防災拠点の整備が始まっている。また、南海トラフでの地震に 加え、首都直下地震対策専門調査会、日本海溝周辺の地震に関する専門調査会が設置され、首都圏直下地震や宮城県沖地震についての検討も始まりつつある。

 一方、地震調査研究推進本部は、地震防災対策特別措置法に基づいて設置された。地震防災対策特別 措置法は1995年兵庫県南部地震での甚大な被害を受けて制定された。当初は総理府に設置されていたが、中央省庁の再編に伴い2001年に文部科学省に事 務局が移管された。地震調査推進本部では1999年4月に、今後10年程度にわたる地震調査研究の基本として、「地震調査研究の推進について~地震に関す る観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策について~ 」を策定し、その中で当面推進すべき地震調査研究の課題として、2004年度末までに「全国を概観した地震動予測地図」を作成することを目標として掲げて いる。この目的のために、活断層調査、地震の発生可能性の長期評価、堆積平野地下構造調査、強震動予測などの地震調査研究が推進されている。成果は、逐次http://www.jishin.go.jpに公表されている。