東山キャンパス
概要        

 

●名古屋大学強震観測Webを構築した背景

兵庫県南部地震の際に発生した「震災の帯」での地表面加速度は,新耐震設計法の二次設計で想定している300~400galを遙かに上回る1,000gal以上と推定されている。それにもかかわらず,新耐震設計による中低層RC建物の被害は極めて少なかった。然し,その結果を検証するための強震記録が「震災の帯」ではほとんど得られていない。このため実構造物の強震時挙動や,本当の耐震性能は十分には明らかになっていないのが現状である。その一方で,免震・制震といった建物応答を制御する技術の導入や,建物と地盤との動的相互作用効果の導入などが進められている。これらの技術を使用するに当たっては,建物に入力する地震動と,実構造物の有している真の耐震性能の両者が明らかになっていることが前提となるが,現状の知見は十分ではなく,検討を行うためのデータも不足している。

地盤の強震観測

兵庫県南部地震以降,防災科学技術研究所,自治省消防庁,気象庁などの公的機関が中心となって,全国に膨大な数の強震計の設置が行われ,強震観測網が整備された。強震計は,自然地盤の地震動の観測が目的であるため地表や基盤に設置されている。得られた地震記録は,強震計の設置状況,地盤データと共にデータベース化され,webなどで公開されており,データの共有化が進んでいる。その代表例がK-NETKiK-NETである。

建物の強震観測

民間を主体ととしているため,不況下で観測点数は頭打ちの状況にある。また,観測対象建物,設置状況棟の紹介,地震記録の公開などに関しては,地盤での強震観測事例に比べ,あまり進んでいないのが現状である。この原因として,建物が個々に異なること,観測の主体が民間でありオーナーの考え方により強震計の設置やデータ公開が左右されることなどが挙げられる。しかしながら,カリフォルニアでは耐震設計基準を改善するための基礎データ収集を行うことを目的にCSMIPが設立され,同時に強震観測のための課金制度が法制化されている。これらより,建物を対象とした強震観測事例と観測記録のデータベース化,及びデータの共有化を図る意義は大きい。

本サイトは建物の強震観測記録の共有化を図るために,名古屋大学東山キャンパス内で行っている複数の建物の強震観測の事例や常時微動記録のデータベース化を行い,これらを一元化してweb公開するシステムを開発した。
同様の試みを民間の建物を対象として行う場合には,どの程度のデータを最低限公開する必要があるか等を検討する必要がある。本サイトでは,これらの検討を行う際の判断材料となりうるよう,できる限りのデータをデータベース化し,公開を試みている。
今後,他の公的機関や民間の観測機関においても,建物の強震観測事例や観測記録のデータベース化とデータ公開が促進されることが期待される。